アメジストの8月の夕方
Maribrengaëlです。
小学校の時通っていた塾に、「UFOみたんだ!窓まで見えた!」と息を切らして駆け込んできたのは水瓶座のTくん。Tくんは私と同学年のYくんの兄ですが、なぜか5年生のクラスで塾の授業を受けていました。いわゆる、6年生クラスでは浮いている存在。中学受験を控えてピリピリしている子たちもいるからか、弟もいる5年生クラスで授業を受けるようになった記憶。兄に横で「教えてあげるよ」とつつかれているYくんはいつも照れくさそうな迷惑そうな顔をしていました。
その日は夏休みで、確か科目は私の苦手な算数。私のとなりはYくんで、「兄は来るかわかりません」と先生に大きな声で言った後に、Tくんが飛び込んできたのでした。「UFOみたんだ!窓まで見えた!」と。
なぜTくんが水瓶座だと知っていたかというと、Tくんの筆箱には水瓶座のキーホルダーがついていたから。金色の板に紫色の誕生石が埋め込まれているもので、たまたま隣に座った時に、「北海道のおばあちゃんに空港で買ってもらったんだ」と教えてくれた。「僕は水瓶座だけどYは牡羊座だから、牡羊座のを持ってる」と。私は、少女向け雑誌“○○レモン”をよく読んでいて何より巻末の星占いが大好きだったので、そのことをよく覚えていました。
その塾のクラスは18:00からで、私たちは夕飯後にきていました。まだ空はそれなりに明るく隣のMちゃんが「こんなに明るいのに見えるわけないじゃん」と小さな声で言いました。Tくんには聞こえたようで、一番前の席の私たちのところまできて言いました。「明るかったから窓まで見えたんだよー!終わったら△△空地に行くといいよ。まだいるかもしれないから」と。
塾の終了後、先生が「もう暗いので迎えにきてもらってない人は近くの友達と一緒に帰るように!くれぐれもUFOなんか探しにいくんじゃないぞー!」と大きな声で言っているのを横に乗り気じゃないMちゃんをつれて空地のある道を通って帰ることにしました。塾の外では、TくんがYくんと待っていて「行くの?行くの?」と私たちについてきました。
その道の途中、Tくんはずっと宇宙の話をしていて、Yくんはずっと無言でした。空地につくとTくんが詳細にUFOを見た時のことを語り出し、私とMちゃんはもうその時にはTくんの言っていることを信じられていました。「夏の大三角形っていうのがあってね…」うす暗い夜空を指さしてTくんが説明している横で、「あっっ!!!!」とYくんが大きな声を上げました。変わっている兄と同学年の女の子二人と一緒にいることが照れくさいのか何も話さなかったYくんが声を上げたので、私たちはびっくりして振り返りました。そして、こう言ったのです。「なんでもない…」と。
時はたち、私は東京の大学に進学していて夏休みで静岡に戻った時、駅で偶然Yくんを見かけました。「わーーーーひさしぶり!」と声をかけると「派手だなー」とドン引きしながらも、関西にある大学に進学したことと、「あんまり会ってない」としながらも兄のTくんが北海道の大学に進学していて学者を目指していることを教えてくれました。私が「昔UFO探しに行ったよね。ほんとおかしかったよねTくん」と思い出したように言うと、さらりとYくんが言ったのです。「実はさ、一緒に空地にいった時に俺も見たんだ。でもTと一緒にされるんじゃないかと思って言わなかった」と。
私の中で水瓶座と宇宙が結びついているのは、もしかしたらこの記憶があるからかもしれないと思っています。Tくんは宇宙人のようで浮いていたけれど、それは最先端すぎただけだったのかもしれません。水瓶座をじっくり考える時、Tくんの筆箱で光っていたキーホルダーを思い出すと共に、今でも最先端を突っ走っていて、変わり者扱いされていてほしいと願うのでありました。時代を切り開くのってきっとそんな人だからね。
Les Chronovoyageurs...
※日本時間 8/4 01:00 に水瓶座満月となります。
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