冬の寝床から抜け出して。
Naoyaです。
暖かく感じる日も徐々に増えてきていて、春っぽさがどんどん増していますね。
今日は二十四節気の3番目、啓蟄(けいちつ)です。冬眠していた虫たちが土から出てくる頃とされています。
この時期の俳句の季語に「水温む」というのがあります。湖や川、池の水が温むことで、水辺の生き物たちや植物たちの活動や成長が始まります。
昔の人は日々の生活の中、家庭の台所で水仕事をしながら少しずつ温んでいく水に触れて、春の訪れを肌で感じていました。簡単に蛇口から温水が出る現代だと、そういう感覚は味わえません。
以前、ちょうど今の時期に訪れた京都で「水温む」という和菓子をいただいたことがあります。繊細な淡さの水色の求肥で包まれていて、中から小豆が数粒透けて見えて、表面の一部がほんのり微かなピンクに色づいた球状のお菓子。要するに、小豆は水の中を泳ぐ魚たちを、微かなピンクは水面に映った花の影を表現しているのです。春の訪れのワンシーンのほんの一瞬を切り取ったようなその和菓子は、まるで絵のような俳句のような美しさや風流さを感じさせてくれました。
先日、2月の終わりから3月の初めまで京都に滞在していました。以前のような観光はほとんどせずに暮らすような感じで、京都の日常を過ごしました。
長い滞在だったので、冬から春への移り変わりを日々の中で感じました。気づいたら冬物のコートが重く、汗ばむことも多くなっていたので、脱いで持ち歩くようになっていました。軽いブルゾンを持参すればよかったなぁと鴨川のほとりを散策しながら思っていました。
京都が好きなところは、四季を日常の中できちんと感じられることです。
自然に囲まれた環境、さまざまな祭事や行事、旬の食材など、その時期や季節だけにしかできない体験に悦びやありがたみを感じます。そして、その限定された悦びやありがたみのひとつひとつを繋いでいくことにより、四季の移ろいという壮大な絵巻物になって、人生に豊かさや深みがもたらされるのです。
啓蟄を迎えてしばらく経った3月12日、奈良 東大寺二月堂ではお水取りという行事が執り行われます。若狭井という井戸から観音さまにお供えするお香水を汲み上げるというもの。元は旧暦の2月1日から行われていた行事で、二月堂の名前もこのことに由来してます。お水取りが終わると奈良に春が訪れると言われていますが、日本の春を告げる儀式であると言ってもいいでしょう。
これからは昼と夜の気温差が大きくなって、何かとバランスが崩れやすい時期になっていきます。そんな不安定な季節を乗り越えると、本格的な春が到来します。
虫たちは啓蟄を迎える頃から、土の寝床を抜け出して行動を始めます。それは虫自身の意思でも、何者かの命令でもなく、宇宙のリズムや森羅万象の法則というものがそこに存在しているからです。
寒い冬はあまり活動的ではなく、やる気もなくて閉じこもり気味という人もいると思います。もしかしたらそういうタイプの人は、自然の生物たちと同じく宇宙のリズムで動いているのかもしれません。
啓蟄は宇宙において、朝の目覚ましが鳴るタイミングのようなもの。さて、冬の寝床から抜け出して、そろそろ活動を始めましょうか。
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